「高度計 ALTIMETER」


高度計 THOMMEN&YCM


高度計です。高度計?まぁ意味は判るけど、いったいそれで何するの?高さが判ってどうなの?
これが普通の反応かと思います。日常的にはまったく必要ないかも…。

そもそも高度計とは何ぞや?どうやって高度を知る道具なのか、ちょっと説明しましょう。
ご存知の通り、地球には「大気」なる物が存在します。そしてこの「大気」には重さがあります。
この重さを「大気圧」と呼んでいます。いわゆる「気圧」です。そう「高気圧」とか「低気圧」の
「気圧」です。この気圧は、地表から離れて高度が高くなるほど低くなります。そりゃそうです、
気圧は大気の物質としての重さですから、下に行くほど重くのしかかっています。
この気圧については、海面(海抜0メートル)地点で101325パスカルを国際標準として定めています。
101325パスカルとは、水銀柱を760ミリ押し上げる事ができる圧力です。
101325ではちょっと扱い難いので、気象ではヘクトをつけて1013.25ヘクトパスカルと言う表現になります。
ほら、なじみが出てきたでしょ? ちなみに昔はミリバールと言ってました。聞き覚えが有る人もいるかと思います。
ミリバールもヘクトパスカルも数値的には同じなのですが、ヘクトパスカルは国際標準の単位なので、
こちらを採用する事にした物です。
また、気圧は高度だけではなく、大気の密度でも変化します。大気の密度を変化させる物、それは温度です。
温度が高ければ密度が下がり、結果気圧が下がります。逆の場合は気圧が上がります。これが地表や海面上
の気温差などによって引き起こされる気圧の差で、高気圧、低気圧が生まれる要因です。
そして、一般的には高気圧になれば晴天、低気圧になれば荒天となります。つまり、気圧を計測する事で、
概ねの天気を知る事ができると言う訳です。
この原理を利用して、家庭用のお天気予報に使われているのがバロメーター(気圧計、晴雨計)です。
バロメーターは気圧の変動を観測して、天気の予報をしているのです。
たとえば気圧が下がる一方であれば、これは低気圧が接近している→雨になる、と言った具合です。

そこで話を戻します。
高度が高くなると気圧が下がると書きました。と言う事は、気圧計を持って高いところに行けば、気圧計が
示す気圧はどんどん下がって行くはずです。そこに距離を表す目盛りを振って置けば、高度が判る!
これが高度計なんです!(高度によりますが、概ね10メートル/1ヘクトパスカル変化します。実際には高度に
よって気圧の変化量には違いがあり、ある程度は理論値として計算式で求める事が出来ます。)

しかし、実際には気圧は様々な要因で変化します。常に一定ではありません。高さだけで無く、気温でも変わるし、
移動性ですから、高くなったり低くなったり常に流動的です。それらの要素をなるべく排除し、正確な高度を
示すように作られているのが高度計です。
とは行っても、限界があります。今日のデジタル式のものは複雑な演算を行えますが、機械式の高度計では
そうも行きません。実際の使用にはそれなりのルールがあるのです。

では、この高度計、どんな局面で使用するのか?と言いますと「登山用」なんです。
もちろん他にも航空機用とか、様々な用途がある訳ですが、ここで紹介する高度計は登山用です。

登山で高度計?と思われるかもしれませんが、本格的な登山には欠かせない道具なんです。主な用途は
高度を知る事と、自分の現在位置を把握する事。そして気圧を測定できるので、概ねの天気を知る事もできます。

もともと気圧計は水銀などの液体を使用して作られていました。精密に計測できる反面、図体が大きく重くなる。
また、液体をガラス管などに封入してあるので、耐衝撃性や運搬には不向きでした。
そこで考案されたのが、アネロイド式と呼ばれる物で、これは「液体を使用していない」と言う意味なのだそうです。
私がここで機械式と言っているのはこのアネロイド式の高度計の事です。



スイス THOMMEN(トーメン)の高度計、トーメンは老舗の時計メーカーでもあり、航空機用の計器類なども
製造しているメーカーです。時計の方ではレビュートーメンとして名が通っています。
左が入門〜中級用のALTITREKと言うモデル。右はプロフェッショナル向けのTXシリーズで、測れる最高高度で
いくつかバリエーションがあり、最高は9000メートル用。このTXシリーズ、お値段も中々どうしで、お高いです。
レビュートーメンは「クリケット」と呼ばれるアラーム機能を搭載した機械式腕時計でつとに有名です。
かつては「歴代合衆国大統領愛用の腕時計」の謳い文句で一世を風靡。



ALTITREKは4500mまで、高度目盛りは1目盛り20メートル。気圧は1目盛り5ヘクトパスカル。誤差±20m 
3000メートル以上は目盛りを読み替え高度を測ります。




TX22 こちらは5000mまで。最高高度はALTITREKとさほど変わりませんが、精度が違います。   高度目盛りは10メートル、気圧は1ヘクトパスカルです。誤差±10m   実際、1階から2階へ行くだけでちゃんと指針が動きます。 気圧目盛りはぐるっと渦巻状になっています。730〜1050まで。さらに高度計は小窓があり、1000メートル以上を この小窓で表示します。ですので目盛りを読みかえる必要がありません。 ALTITREK、TXシリーズ共に軸受けにルビーを使っており、それぞれ16石、19石仕様となています。 この辺りはさすが時計屋!と言ったところでしょうか。下手な機械式の時計より贅沢に石を使っています。 精度に対する拘りでしょう。 この写真では、1002ヘクトパスカル、高度は142〜3メートルと読めます。前出のALTITREKもほぼ同じ数値を示して いるのがわかると思います。 背面はどちらも共通。センターから右斜め下に伸びている部分の先に隠し穴があり、指針の微調整を行う。 調整には時計用の精密なマイナスドライバーが必要。普通のいわゆる精密ドライバーでは不可。 背面のロゴ 上面カバーの上部と下部が開いており、高度目盛りを動かすためのダイアル操作を行えるようになっている。 上面カバーをはずす。う〜ん計器そのもの!かっこ良すぎます! 使い方は、まず出発地点の標高を調べておき、高度目盛りを針が示している所に合わせます。 つまり、〇〇気圧の時、〇〇メートルの位置にいます、と言う事ですね。 後は山を登るだけ。登っていくと、前述のように概ね10メートル/1ヘクトパスカルづつ気圧が下がり、指針が 高度を示してくれます。但し、先に書いたように、様々な影響で誤差が出ます。したがって山小屋や基準点など、 標高を確認できるところで補正をかけながら使用します。目盛りを0からスタートすれば、どれ位登ったかも判ります。 トーメンの高度計は、プロも厚い信頼を寄せており、かつては愛用者も多かったと聞きます。 今でこそ手軽にGPSデータを利用できるようになりましたが、かつては高度計、コンパス、地図のみが頼りだったのです。 プロでもたぶん今でもバックアップで携行する人がいるのではないでしょうか?(電子機器は便利な分極限状態で 使用不能に陥ったりしますから…) おまけ。こちらは国産のYCMコーポレーションの高度計。性能的にはALTITREKと同等です。 機械式の高度計は今でも比較的簡単に入手できます。山のお供におひとついかがでしょう? (トーメンはすでに製造を終了しているようで、根気良く中古を探すしかないみたいです) で、そんなもの持ってるあんたは登山するの? って言われそうですが、もちろんです!  (ちなみに富士山は20回近く登ってますよ) おまけ 長野県と群馬県にまたがる、四阿山(あずまやさん)に登って来ました。標高は2.354m 高度計では2.360mになりました。なかなかの物でしょ!


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