「GUN & TYPEWRITER」


REMINGTON RAND [DELUXE NOISELESS] & REMINGTON ARMS [New Model Army]



「GUN & TYPEWRITER」などと物々しいタイトルですが、別に「ペンは剣より強し」みたいな高尚な
話をしようという訳ではありませんので、あしからず…。

商業ベースで初めて成功し、世に広まったタイプライターは、19世紀後半、1873年頃に新聞編集者
で後に収税官となった、クリストファー・レイサム・ショールズより買い取った特許でレミントン
が製造したタイプライターが最初と言われています。また、[TYPE WRITER]と言う言葉もレミントン
が最初に使ったと言う事になっています。
ショールズが有した特許とは、QWERTY配列のキーで、この配列は今日のパソコンなどのキーボード
にも使われている最もポピュラーなキー配列です。
ショールズがこの特許を元にタイプライターの製造をするに当たって、行き着いたのが当時、銃火
器やミシン製造をしていた、E.レミントン&サンズ社でした。

ショールズの特許を元に製造されたレミントンのタイプライターは、QWERTY配列と相まって、当時
としては驚異的なタイプ速度を実現していました。

さて、このE.レミントン&サンズ社は後にレミントン・アームズとなり、銃火器専業メーカーとして
主に南北戦争前後、コルト社やS&W社(スミス&ウェッソン)と共に優秀な銃を製造する事になります。
ちなみにレミントン・アームズはアメリカ最古の民間銃器メーカーです。

レミントン「ニューモデルアーミー&ネイビー」はコルト・ドラグーン、コルト・ネイビー、アーミー
などと並んで名銃の誉れ高い拳銃です。
この頃の拳銃は、パーカッション・リボルバーと呼ばれ、まだカードリッジ式の金属薬莢銃弾が無い
時代のもので、シリンダーに直接火薬を詰め、鉛球の銃弾を込め、暴発防止のグリスを塗って、
発火用のキャップをしてようやく撃てるとうい代物でした。要は先込め式、火縄銃やフリントロック
の延長上に有った訳です。
さすがにこれを戦場で行うのは無理がありますので、シリンダーが簡単にはずせる様になっており、
装填済みのシリンダーをいくつか用意しておいて、シリンダーごと交換を行える様になっていました。
クリント・イーストウッド主演の「ペイルライダー」と言う映画で、イーストウッド扮する謎の牧師
ガンマンが、最後の決闘の時にこのシリンダー交換を行うカットがあります。

と、言う様な訳で、西部劇&古いタイプの拳銃好きとしては、レミントンのタイプライターは大変
魅力的な訳であります。

E.レミントン&サンズは1886年にタイプライター部門を切り離し、レミントン・スタンダード・タイ
プライター社としますが、後にファイリングシステムで成功していた事務用品のランド社に買収され
レミントン・ランド社となります。このレミントン・ランドは1955年まで続きます
今回紹介しているタイプライターは、レミントン・ランド社時代の製品です。
なんだ、じゃあ銃とはすでに関係ないじゃん!と思われるかもしれませんが、レミントン・ランドは
第2次大戦中にM1911A1(コルト・ガヴァメントとして知られる銃)をライセンス生産しています。
当時最も数量を生産していましたので、血統は引き継がれていた、と、いう事でしょうか…。






全体像、ポータブル機なので、ケースに入れて持ち歩けます。下側ケースに置いてある状態です。
この個体は、シリアルナンバーから、1938年製であると思われます。
もちろんいつもの事ながら、バリバリの現役です!(笑)







キャリッジ部。縮緬塗装が大変美しい、[DELUXE]の名に恥じない仕上げ。
両側の丸い部分にリボンがセットされています。タイプライターのリボンはインクが乾くまで使え
ますので、片側に巻き取られたら切り替えて反復させて使用します。







インクリボン。この時代のレミントンのリボンは入手不可のようです。スプールが無い、巻き芯のみの
タイプです。幸い幅が同じ物(13mm)が入手できますので、巻き換えて使用します。







DELUXE NOISELESS ノイズレスとは文字通りノイズが無い事を売りにしていた物で、タイプライター
特有のカシャカシャ音を極力抑える工夫がしてあります。ですのでタイプライターと聞いて、
皆さんが連想するような音はこの機種からはしません。決して静かではありませんが…。
ノイズ軽減の仕組みは活字アームの動きにあり、活字がリボン手前で減速する巧妙な仕組みになって
います。







キーの配列。パソコン用のキーボードと基本的に変わりません。記号類は一定していなくて、機種や
使用先に適した記号を盛り込んだ物など様々です。この機種は!や@マークがありません…。
んーメールアドレスと言うものがある今日にはちょっと残念か…その代わりセント¢記号があります。
ちなみに!は「'」と大文字用「.」をバックスペースを使って同じ位置に重ねて打つと再現できます。
この様に無い記号は重ね打ちで代用するのがタイプライター流ですね。
あ、数字の「1」もありません。小文字のエルと兼用になっています!
「2」の左隣のキーは「1」では無くバックスペースキーで、これで一文字分戻ります。
尚、スペースキーを押しながら文字をタイプしても同じ位置で打つ事が出来ます。







背面のロゴ。これがまた美しいのです…拘りと誇りを感じます。
もちろんここも縮緬塗装です。







あぁカッコいい!(馬鹿だね~)レミントン ニューモデルアーミーです。ちなみにこの銃はHWS(ハート
フォード)製のガスガンです。この手の古式銃のガスガンは珍しく、このモデルも限定生産品。私は発火
モデルより弾が打てるほうが好きなので…。
銃身下の長細い三角の部分はローディングロッドと言い、実銃ではこれを使ってテコの原理で銃弾を
シリンダーに押し込むのに使用します。今日考えられない効率の悪さ…しかも6発分、6回これを行うと…。
シングルアクションですので、その都度、撃鉄(ハンマー)を上げ、引き金(トリガー)を引かないと
打てません。しかもまだ黒色火薬の時代ですから打つと盛大に爆煙が出るのです…。
さらに火薬を入れたパウダーフラスコ、キャップ(雷管)、グリス、弾を鋳る為の道具など、携行品も
多く、いやはや当時は大変だったんでしょうね…。
弾を鋳る様子はメル・ギブソン主演の「パトリオット」と言うアメリカ独立戦争を描いた映画に出てきます。
ペンチのような形の鋳型に溶かした鉛を流し込んで1発ずつ作ります。
ちなみにこうした雷管式のパーカッション銃は、登録すれば古美術品として実銃の所持が可能です。
(もちろんちゃんと稼動状態で) 高いですけどね…日本では200万円前後でしょうか…。
↓興味のある方はこちらを。              
Loading The 1858 Remington Percussion Revolver

タイプライターの話か銃の話か判らないページになってきちゃったな…





使い方講座

簡単に使い方を説明いたします。参考まで。

時代やメーカー、機種で違いますので一概に言えませんが、骨董級のものを省き大体似たような物と思って
良いと思います。

消耗品(インクリボン)については現在でも入手できる物もあれば、代用する場合、あるいは応急的処理で
何とか使う場合など状況により様々です。専門店が有りますので聞いてみるのが一番です。
応急的処理とは、リボンに痛みが無い場合、スタンプ用のインキを補充してあげる事です。意外とこれで
普通に打てるようになります。
用紙は通常のコピー用紙などで十分です。もちろん凝った物を探して使うのも良いでしょう。


◎各部の名称


さて、まずはキャリッジロックがある場合は先に解除してください。この機種は、右側のプラテンノブが
キャリッジロックを兼ねています。引き出すとロックが解除されます。
キャリッジ・リターン・レバーでキャリッジをスタート位置に動かします。
キャリッジのペーパーリリースを解除して、用紙をローラーに通します。平行になるようにしてください。
セットしたらリリースを戻し、ペーパー送りノブ(プラテンノブ)を回して印字開始位置まで紙を送ります。
通常にノブを回すと、一改行分ずつ動きますので、細かく位置を調整する必要がある場合は、左側のノブにあ
るボタン(バリアブル・ライン・スペーサー)を押し込みながらまわすとラチェットが解除され、任意の位置
へ送る事が出来ます。ペーパーフィンガーで用紙の両側を押さえます。
また、キャリッジを左側に動かしたい場合は、キャリッジリリースレバーを解除します。キャリッジを任意の
位置でとめる事も出来ます。


タイプの流れは

用紙をセット
↓
タイプを開始
↓
改行ベルが鳴る
(改行するか、最期まで打ち続けてから改行するかを見極め)
単語が途中で切れた場合はマージンリリースキーでロックを解除してハイフンをタイプしてから改行
↓
キャリッジ・リターン・レバーを右側に引きキャリッジを右方向にスライド
(改行ベル前に途中で任意に改行する場合もこの動作をします)
↓
キャリッジがスタート位置に戻り、同時に改行される
↓
再びタイプを開始する

これで後はタイプすれば良いのですが、その前に細かな設定を確認しましょう。




※改行
キャリッジ・リターン・レバーの横に、改行数を設定するライン・スペース・レギュレーターが付いています。
この機種は1〜3行で選択できます。例えば3にすると、キャリッジ・リターン・レバーで改行の際に3行分一気
に改行します。

※印字開始、終了位置
紙に対して印字の開始ポイントと終了ポイントをマージン・セット・スライダーで設定します。
特に終了位置は重要です。ここで設定した終了位置になると、チンとベルが鳴って知らせてくれます。
これを無視して打ち続けると、数文字で完全に打てなくなります。(キーを押してもスタンプされない)
ですのでベルがなった時点で文章の切れを考えて改行するか、単語が切れても最後まで打つか決める必要が
あります。
単語途中で切れる場合は、「マージンリリースキー」を使ってストップ状態を解除し、ハイフンを打って
改行するのが一応のルールです。

※TAB(タブ)
タブは印字開始位置を任意に決めた場所へ動かす機能です。
例えば用紙の真ん中辺りから揃えて印字したい場合など、改行の度にそこまでスペースで送るのではなく、
タブを設定しておけば、タブキーひとつで一気にそこまでジャンプしてくれると言うものです。
通常タブは複数設定できるので、仕上がりのレイアウトをイメージして設定しておくと便利です。

こんな時にタブを使うと便利   例えばこの様にdisc 2 側の先頭を簡単に揃えられます。




※リボン切り替えレバー
2色リボンというものが有り、このレバーで2色どちらかを選択します。文面の途中でも切り替えられます。



※リボン送り切り替えボタン(本体左右側面)
リボンの進行方向を切り替えます。片方に全て巻き取られたらこのボタンで回転を反転します。
自動で切り替わる機種もあります。



※インパクト調整レバー
タイプする際のキーのインパクトを調節します。女性など指の力が弱い人はL、強くなるに従いH側に
設定します。打ちながら好みのポジションを見つけます。感触としてはLの方が小さい力でタイプ出来ます。



打ち終わったら、ペーパーリリースを解除して、プラテンローラーに沿って奥側にゆっくり用紙を引き抜きます。
無理に引くとシワになるので注意して下さい。プラテンローラーを回しながら抜いてもOKです。
尚、使用しないときはリリースを解除しておくほうがローラー類に負荷が掛からず良いと思います。
キャリッジロックレバーを手前に引きながらプラテンノブを押し込むとロックがかかりますので、
そのまま止まるまでキャリッジをセンターに移動して完了です。
持ち運ぶ場合はシフトロックを掛けてキャリッジが上下に動かないように固定します。


日常の手入れ
活字は使用するにつれてインクが蓄積して汚れてきます。酷くなると文字が乱れますので、付属の
ブラシで時折清掃が必要です。使い古した歯ブラシなどでも良いと思います。(コーティングされたブラシ
は活字を傷めるのでやめたほうが無難です)
また、活字アーム部分などに埃がたまると作動不良などにつながりますので、ここも時折清掃しましょう。
プラテン(用紙を送るローラー)も意外と汚れてきますので、ベンジンなどゴムを侵さない物で軽く
拭くと良いと思います(水で固く絞ったタオルなどでもOK)アルコール類はゴムを侵すので要注意です。
機械物ですから時折要所への注油も必要ですが、自信が無ければ専門店に任せるのが一番でしょう。
とにかくオイルの付けすぎは厳禁です。埃を呼び込み不調の原因になります。





ケースへ収納するとこんな感じになります。上蓋を取り外しできますので、その都度ケースから出す必要は
ありません。ポータブルとはいえ重量はそれなりにあります…。





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